建物の記憶を継承したつる細工工房。
新旧の素材を編み込み、
店主の挑戦をしなやかに包み込む空間。
山葡萄のつる皮で手提げかごを製作する
「つる細工 工房はしばみ」の店舗兼作業場の為のリノベーションです。
「以前は蕎麦屋だったお店の雰囲気を残したい」
店主は義父が営んでいたお店の歴史を紡いでいくように、既存の素材を生かしていくことを希望されました。
木の表しとなった柱や趣のある下がり壁、魅力的な既存の仕上げを出来る限り生かすように、
大工や左官職人、塗装職人の手仕事により改修箇所や素材が感じられるように仕上げました。
新しい機能となるカウンター窓や展示棚は、
合板の積層を生かしたディテールで空間にアクセント加えました。
一方で、店主はつる細工だけではなく、新しい製作にもチャレンジしていくことを考えられていたため、
お店の使い方が変化した際にも対応出来ることが必要でした。
合板で製作した2つの置き家具は、作業スペースと展示スペースを隔てる目隠しであり、作業用の道具棚です。
接客や打合せの際には向かい合わせることでテーブルとなります。
壁に寄せて展示スペースを広げることも可能です。
コンパクトな工房は、変化していく店主のチャレンジをしなやかに包み込みます。
新たな歴史を歩き始めた建物が、
店主のチャレンジと共にこれからも変化していくことが楽しみです。